今日は私のお気に入りのDJ・プロデューサー、Camilo LaraのMexican Institute of Soundについて。
グループ名ですぐ分かるけれども、メキシコ出身のグループです。(グループって言ってもメンバーは恐らくCamilo Laraだけだが)
メキシコの暗部から矛盾から絶妙な皮肉を交えた歌をいろいろ作っているおっちゃんで、ひねくれたものが大好きなtirimenJ5としては常に注目していたい人でもあります。
いろいろ面白い曲があるんだけれども、今日は動画が「閲覧注意!」ものの問題作、その名もズバリ「Mexico」(2012年発表) を取り上げようと思います。
閲覧注意動画「Mexico」(メキシコ)
途中、グロい写真も出てくるので、苦手な方は音だけにしておきましょう。
メキシコの悪名高い麻薬カルテルと、腐敗した政府に対する告発の歌ですね。グロい写真は麻薬カルテルがらみの殺人犠牲者の写真なわけです。こういった写真の背景の説明は、「世界の混沌を歩く ダークツーリスト (講談社文庫) 」のメキシコの章を読むのが手っ取り早くて分かりやすい。世界各国のアブナイ場所への潜入ルポですが、メキシコの章は群を抜いて危険なのがよくわかる。著者も殺されかかってますし。そういうヤバい場所、ヤバい事情なわけです。
歌詞の注目部分
歌詞をよく読むと、メキシコ国旗と国歌が歌いこまれている。
国旗
Verde de mota (大麻)
Blanco de coca y (真っ白なコカイン)
Rojo tu sangre (真っ赤なお前の血)
”Mexico” Mexican Institute of Sound 歌詞抜粋(括弧内はtirimenJ5)
Verde de mota(大麻)のVerdeは「緑」、コカインの「白」、真っ「赤」な血。緑と白と赤はメキシコの国旗に使われている色ですね。
もともとこの色の由来は、
「緑・白・赤は、スペインから独立するときに掲げた諸州の独立・信仰・統一の「3つの保障」を表し、緑は諸州の独立を、白はカトリックへの信仰心を、赤は民族の統一を象徴している。」
(東京都立図書館 ウェブサイト)
「緑は「民族の運命における国民の希望」、白は「カトリックや宗教的な純粋さ」、赤は「国に殉じた愛国者の血」」
(ウィキペディア)
なんだそうな。
建国時の高邁な意気込みの行く末がこんな麻薬でボロボロの国に成り果ててしまっている。なんとかならんのか。
国歌
続く一節では国歌の一部が埋め込まれている。
Estado fallido, campeón (失敗国家のチャンピオン)
Orgullosos pateos traseros (誇り高き裏庭)
Al sonoro rugir del cañón (轟く大砲に)
Y se siembre con tus manos (そして自身の手で種をまく)
La hierba, al sonoro rugir del cañón (麻薬、轟く大砲に)
”Mexico” Mexican Institute of Sound 歌詞抜粋(括弧内はtirimenJ5)
最後の「Y se siembre con tus manos / La hierba, al sonoro rugir del cañón」。この部分は、メキシコ国家の
「Y retiemble en sus centros la tierra, al sonoro rugir del cañón 」(轟く大砲に 大地の中心も揺さ振られる)
(世界の民謡・童話)
のもじりになってますね。
メキシコの大地「la tierra」が、「La hierba」(直訳は「草」だが、「大麻」のこと)に置き換えられている。メキシコの大地が大麻生産の土地になっていることへの皮肉ですね。
敢えて何も言わない Muerdete la lengua que hay…
この曲が発表される前年の2011年は、麻薬カルテルがらみの年間殺人数が初めて2万人を超えている。2年後にはエル・チャポの収監(2回目)となるのですが、そういう時期の曲です。
Muerdete la lengua que (敢えて言わない方がいい)
hay treinta muertos en Veracruz(ベラクルスで30人の死者)
”Mexico” Mexican Institute of Sound 歌詞抜粋(括弧内はtirimenJ5)
2014年AFPの記事
https://www.afpbb.com/articles/fp/3188755
この記事を読むと、麻薬カルテルによる住民殺害は2012年のできごとのようです。
全然30人どころじゃぁない。
2000年には、麻薬撲滅運動を精力的に行っていたメキシコのオカンポ枢機卿が暗殺されてますが、この問題は「敢えて口にしない」方がいい話、なんでしょうね。