「危険ドラッグ」のニュースを仏語と西語で読み比べ – 洗練 vs 親しみ

「危険ドラッグ」のニュースを仏語と西語で読み比べ – 洗練 vs 親しみ

台風が怖いです。ちりめんです。こんにちは。

このところNHK Worldのニュースを読んでます。フランス語ニュースとスペイン語ニュース、必ずしも同じ話題が出てくるわけではないですが、先日「危険ドラッグ」関連のニュース記事が両方の言語で取り上げられていたので、比較して読んでみました。

ニュースのまとめ方とか表現方法とか、やっぱりこの2つの言語って「似てるけど違う」なぁ、って思いました。

ニュースの概要

危険ドラッグに詳しい横浜薬科大の篠塚達夫教授の解説のニュースを読んでみました。
Comentario : La difícil regulación de las drogas sintéticas en Japon』(スペイン語版)
Commentaire : réglementer les “substances dangereuses” au Japon』(フランス語版)

内容は同じなんですが、フランス語版とスペイン語版では伝え方がちょっと違う。

  1. 形式が違う
  2. フランス語版はインタビュー形式、スペイン語版は間接話法

  3. 話の順序が違う
  4. フランス語版とスペイン語版ではなぜか話の順序が違う。。
    大体以下のような内容。

    A.危険ドラッグが広まっている現状(低価格、パッケージデザイン)と若者への情報提供の必要性
    B.危険ドラッグを構成する化学物質とその特徴。新しい構成のドラッグが次々に作られる事。
    C.規制の難しさと政府の対応
    D.規制は日本だけでなく世界的な対応が必要

    フランス語版のニュースでは「ABCD」の順だけど、スペイン語版では「BAC」のみでDはない

  5. 話の重点が違う
  6. スペイン語版ニュースでは危険ドラッグを構成する化学物質を具体的にあげて説明(カンナビノイド、カチノンなど)してるけど、フランス語版では割愛されている。

たぶん、ですがスペイン語版はインタビューをそのまま時系列に訳して後半は時間切れでDがカットされ、フランス語版は時間枠内に収まるようにあらかじめ要約してるような気がします。

「危険ドラッグ」はどう訳されているか

ドラッグは”危険”って言わなくても危険だろう、と思うのですが、この簡単そうで難しい(と思われる)日本語はこんな風に訳されています。

スペイン語版

drogas sintéticas (合成ドラッグ)
drogas peligrosas (危険ドラッグ)
drogas fuera de la ley (脱法ドラッグ)
este tipo de drogas/estupefaciente (この種の麻薬)

色々言い換えられてますが、最終的には”drogas peligrosas“が一番使われていたような。そのまんま直訳。

フランス語版

les substances dangereuse (危険物質)
ces substances (この物質)

意外と言い換え少ない。
麻薬を意味する”drogue”は使われずに、一貫して”substances“(辞書的には「物質」)が使われてました。

洗練されている仏語と親しみやすい西語

危険ドラッグの流通を防ぐためには若者にその危険性を知らせないといけない、というくだりが出ます。

フランス語版

– Je crois que le principal défi à relever est de bien informer les jeunes sur ces substances.
((薬物の)盛り上がりに対する主要な対抗は、若者にこの物質に関する情報をしっかり与えることだ、と私は考えます。)

スペイン語版

– Por este motivo, el profesor cree que lo más importante es informar a las jóvenes.
(こういった理由から、もっとも重要なことは若者に情報を与えることである、と教授は考える。)

該当箇所を抜き出してみました。 (訳は信用しないでください)

フランス語はこの箇所に限らないんですが、全体的に短い言葉でも無駄なく話を凝縮してきて洗練されてるなぁ、って思います。
ちょっと抽象的な表現になるんで、一瞬「?」ってなったりします。そこがフランス語の難しいところ!

le principal défi à relever」って、こういう所、すぐにピンと来難いんですよねワタシは・・・慣れも必要だろうけど、考え方が鍛えられないと難しい。(だから訳出も自信がない)

逆にスペイン語は、「lo más importante」(最も重要な事)って、すごい分かりやすいね。

もう一つ例で、危険ドラッグの依存性についての箇所です。

フランス語版

– Ces substances entraînent une forte dépendance …
(これらの物質は強い依存を導く・・・)

スペイン語版

– el grado de adicción es muy alto …
(この中毒の程度はかなり高い・・・)

スペイン語は日本語的考え方でもついていけるけど、フランス語はやっぱり少し発想が異なる。

こういったところがスペイン語はとっつきやすい、って話になるのかもしれません。

まとめ

NHK Worldのニュースはスペイン語版とフランス語版は放送時間帯が異なるので、意外とまるまる同じニュースを両方の言語で読むって難しかったりします。今回読んでみて、同じニュースでもこんなに伝え方って違うのか、と驚きました。

スペイン語版は肝心の部分が抜けてるし、ちょっとショック。

スペイン語ニュースは伝えようとするニュース数が多い分だけ、ちょっとザツ?な印象も、なくはないかな。。。

改めてフランス語の洗練されたところにぐっときました。