Blacamán el bueno, vendedor de milagros(奇跡の行商人、善人のブラカマン)は原文が12ページの短編で、これもタイトルからは想像できないですけど、奇想天外な復讐譚、といった感じの話です。
個人的には、この本の中でいちばん読むのが大変!でした。
他の話は辞書を引いて少しずつ読んでいけば、全部はわからなくても全体の話の流れや雰囲気はなんとなくつかめたんですが、この話は最後まで「???」で終わってしまってちょっとショック。
苦労した要因としては、
・一文が長い(どこで区切ったらいいのか・・・)
・突然「語り」(売り口上など)が出てきて誰が主語なのか混乱する
・話の展開が予想つかない上に、テンポが速い
・辞書にのってないような単語や表現、または辞書に載っていてもどの意味か分からない
などなどの理由があるように思いました。
基本的に話は、「私」こと善人のブラカマンの語りで進んでいきます(1人称)。
でもそのことを自覚して読めなかったのも、混乱の一因だったかも。。。
物語の前半は特に展開が速くてつかみにくく(後半はちょっとましだったものの、)
まだまだ語彙はもちろん、文の解釈もダメだなぁと自分の限界を感じた1話でありました。
記憶にのこった原文
話がよく分からなかったので、翻訳を読みながら原文を読み進めていったんですが、その中で面白いなとおもった箇所を少し見てみようと思います。
出逢いの場面
物語の最初、「私」と悪人のブラカマンの出逢いの場面です。
こいつならひょっとすると使いものになるかもしれないと考えたのだろう、だしぬけにあの男がぼくの身の上を訊ねた。
両親のいない天涯孤独なみなし児ですが、どういうわけか、おふくろに先立たれたおやじだけはまだしぶとく生きています、と答えると、
(p98 「エレンディラ」ちくま文庫)~(中略),cuando él debió verme por dentro alguna luz que no me había visto antes porque me preguntó de mala índole quién eres tú, y yo le contesté que era el único huérfano de padre y madre a quien todavía no se le había muerto el papá, ~(後略)
(p84 原文)
índole 特徴、性質
huérfano 孤児の
ざっと読んでなんとなくわかるような、でもちょっと引っかかるな、というのが関係代名詞。
日本語とは話の順序が逆転してくるような錯覚にとらわれてしまうのでゆっくり読んでみます。
alguna luz
まずはちょっと気になった表現から。「こいつならひょっとすると使いものになるかもしれないと考えたのだろう」の箇所。
原文はまた面白い表現になってた。
él debió verme por dentro alguna luz que no me había visto antes
直訳すると、「彼は私の内側に今まで見出せなかった何らかの光を見出したのだろう」といった感じでしょうか。
何か光るもの、才能まではいかなくても何かを感じ取った、という雰囲気が「luz(光)」という言葉からわかるような気がします。
一瞬関係がわからなくなったよ 「a quien」
yo le contesté que era el único huérfano de padre y madre a quien todavía no se le había muerto el papá
関係代名詞はややこしくて混乱することが多いです。。。
なので(あってるかどうかちょっと自信ないけど)順を追って考えてみます。
まず、辞書を引くと「morirse a A」で「Aにとって死んでしまう」と出ていて、
「Se le murió su mujer(彼は妻に死なれた)」という例文も載っています。
(つまり死んだ人が主語)
そして、「a quien」なので、関係代名詞で接続するもとの文章ではmadreは主語ではなくel papáが主語で、
el papá todavía no se le había muerto a madre
母はまだ父に死なれていない→父はまだ生きている
なので直訳すると
「父と母のいない孤児で、母はまだ父に死なれていない、と私は彼に答えた」
と何とも回りくどい文章です。でも日本語訳はその回りくどいロジックを解り易く面白く訳してありますね。
「mal」の用法
悪人のブラカマンが死んでお墓が建てられる場面。
~(中略)その墓碑にはゴチック体の大文字で、海兵隊員を嘲弄し、学問の犠牲となって倒れた今は亡き(悪党の という言葉を入れたかったのだが、いくらなんでもそこまではできなかった)ブラカマン、ここに眠る、と刻ませた。
(p110 「エレンディラ」ちくま文庫)~(中略)una lápida de hierro donde quedó escrito con mayúsculas góticas que aquí yace Blacamán el muerto, mal llamado el malo, burlador de los infantes y victima de la ciencia, ~(後略)
(p92 原文)
mayúsculas 大文字の
yace yacer(葬られる)の現在形
infantes 子供という意味もあるけどここでは男性名詞で「歩兵」
この話の他の箇所でinfantes de marinaが出てくるので、海兵隊員となっている。
ここで気になるのは「(悪党の という言葉を入れたかったのだが、いくらなんでもそこまではできなかった)」の部分。
,mal llamado el malo,
「mal」には「不十分に」とか「よく~できない」という意味があります。
なのでこの部分を直訳すると「悪党、と不十分に呼ばれた」つまり「悪党、としっかり(石碑に)刻めなかった」となります。
すぐそばに「el malo」(悪党)とあるので、ついllamadoの前のmalも「悪い」って意味で捉えそうになるけど、違うんですね。
malとかmaloとか使い方だんだん混乱してくる。
malo(名詞)悪者
mal(副詞)悪く、不十分に、不快に、etc.
mal(名詞)悪、悪事、不幸、不都合、etc.
まとめ
原文は私にはちょっと難しかったけど、話自体はなかなか奇想天外でテンポ良く語られて面白かったです。
この本の中で1、2番に好きな話かもしれない。。。
ほかにも気になるところはあるけど今日はこの辺で。
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