スペインの暗〜い応援歌。


英米圏以外のバンドってあまり日本では紹介されることがないような気がしますが、結構個性的なバンドがあって面白いんですよね。

その中でも今回は、たくさん気になるスペインのバンドのなかでLéon Benaventeを取り上げてみたいと思います。

2012年から活動している4人バンドで、メンバーの平均年齢はおそらく40代後半くらい?それぞれミュージシャンとしての活動歴も長いようで、ベテランが集まったバンドのようです。

社会批判的でダークでアグレッシブなサウンドですが、それはデビュー当初から今年頭に発表された4作目「ERA」まで続いています。

バンド結成10年となるわけですが、今回はこのバンドの代表曲のひとつ(そしてこのバンドの性格がよくわかる)、「¡Ánimo, valiente!」を取り上げてみたいと思います。

¡Ánimo, valiente!

Ánimo. Ánimo, valiente.

(元気を出せ、勇気をもて、勇気を)

サビなんて、「Ánimo!(元気出せ!)」って言ってるわりに、全然明るさがない!

むしろ何となく恨みっぽい感じがするわけですが、歌詞を読むと納得。

Tú que sabes escalar las montañas.

que recorres los caminos con paciencia.

que conoces toda España.

y vives bajo la influencia.

tú que sabes lo que fueron los ochenta.

te mereces todo lo que te pase.

eres de la resistencia.

el cuchillo entre los dientes.

Ánimo. Ánimo, valiente.

・・・

”¡Ánimo, valiente!” Léon Benavente(歌詞抜粋)
山登りを知っている君
忍耐強く道を行く君
スペイン全土に行ったことがある君
そして、君は影響力の下で生きている

80年代がなんであったかを知っている君
全ては自業自得
君はレジスタンス出身
口に刃を銜えて

勇気をもて、勇気を
・・・
(tirimenJ5拙訳)

80年代スペインって?

ちょうどこの曲が発表された2013年頃はカタルーニャ独立問題が再燃してきた時期ですね。

このあとの歌詞に出てくる「un idioma casi extinguido(消滅寸前の言語)」といえば、カタルーニャ語、バスク語、ガリシア語などのスペイン自治州で話されている言葉を連想するし、「la resistencia(レジスタンス)」とか「 la independencia(独立)」なんてもろ直接的な単語が出てくるがために、この歌を「独立運動の応援歌」ととる向きもあるようです。

が、バンドメンバーはあくまでもこの歌を特定の誰かを批判しているのではなくて、

«Dedicaría la canción ‘Ánimo,valiente’ a los que sufrimos las decisiones políticas»

(政治的に決定されたことに苦しんでいる人に対する歌です)

と表明しています。

さて、「lo que fueron los ochenta(80年代が何であったか)」という一節。

いろいろ考えられるんですけど、独立問題を念頭におくと、ETA(バスク祖国と自由)とGAL(反テロリスト解放グループ)の殺し合いが思い起こされるかもしれません。

GALは1983年、スペイン当局が非公式に創設した組織です。GALはETA活動家とおぼしき人(実際は違う人も含む)を拉致・拷問し、それに対抗してETAはGALの一員を暗殺したりと、血で血を洗うような状況でした。その頃バンドメンバーはおそらく10代になったばかりではないかと推測するんですが、多感な時期にこういった社会状況を目の当たりにしていたのかもしれません。

ちなみにバンド名の由来はスペイン北部の都市、レオンとベナベンテで、音楽活動のためにこの2つの都市をしょっちゅう往復していたことからついたようです。