[フランス語]フランス語の野菜(légume)の名前。と、それに関係する表現。

[フランス語]フランス語の野菜(légume)の名前。と、それに関係する表現。

今月はラルースやさしい仏仏辞典の「L」を読んでたんですが、「légumes」の項に出てきた野菜の名前が実はあまり知らなかったので(汗)いろいろ調べてたら、野菜を使った言い回しがけっこうあって面白かったのでまとめてみました。

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ラルースの説明から

まずはラルースやさしい仏仏辞典の、légumesの説明を読んで見ます。野菜の名前が羅列されてます。

légumes (n.m.pl)

S. Les légumes se classent en trois grandes catégories:

les légumes VERTS ( POIREAUX, CAROTTE, NAVETS, ARTICHAUTS, CHOUX, CHOUX-FLEURS, HARICOTS VERTS, PETITS POIS, ÉPINARDS, OIGNONS, COURGETTES, AUBERGINES, POIVRONS );

les légumes SECS ( HARICOTS SECS, FLAGEOLETS, LENTILLES );

les FÉCULENTS ( POMMES DE TERRE, RIZ ).

面白い野菜の分類の仕方ですよね。
青物(les légumes verts)乾燥野菜(les légumes secs)でんぷん質の野菜(les féculents)
に分かれてます。
日本では葉物野菜とか根菜類とかきのこ類とか山菜とか言うけど、なんか違う・・・

なじみの野菜もちょっと違いますよね。

■les légumes verts 青物
poireau (n.m.) リーキ、セイヨウネギ、ポロネギ
carotte (n.f.) にんじん
navet (n.m.) かぶ
artichaut (n.m.) アーティチョーク
chou (n.m.) キャベツ
chou-fleur (n.m.) カリフラワー
haricot vert (n.m.) サヤインゲン
petits pois (n.m.) グリンピース
épinard (n.m.) ほうれんそう
oignon (n.m.) たまねぎ
courgette (n.f.) ズッキーニ
aubergine (n.f.) なす
poivron (n.m.) ピーマン

■les légumes secs 乾燥野菜
haricots secs (n.m.) 乾燥させた豆
flageolet (n.m.) デボ豆
lentille (n.f.) レンズマメ

■les féculents でんぷん質の野菜
pommes de terre (n.f.) じゃがいも
riz (n.m.) 米

野菜を使った言い回し

辞書引いて出てきたやさいに関する面白表現をつらつら並べてみました。

POIREAU (n.m.)(pl. POIREAUX) ネギ

faire le poireau = rester planté comme un poireau「長い間待つ」

畑に直立して植わっているネギを思い浮かべると、その雰囲気がわかるような気がします。

このフレーズが長いからか、poireauが動詞化された、

poireauter 長い事待つ、待ちくたびれる

という単語もあります。

CAROTTE (n.f.) ニンジン

Les carottes sont cuites.「今さらどうしようもない」

「もう終わってしまったことだ」、「万事休す」という意味でも使われるようです。

直訳だと、「ニンジンは料理された」。

昔はニンジンは貧しい人の食べ物だったらしく、ニンジンだけで生きてる、というと極貧の生活をしていると言う意味だったらしい。それから19世紀くらいになると、死にかけた人のことを「avoir ses carottes cuites(煮込んだニンジン持ってる)」といったらしく、そこから今の「万事休す」になったようです。

la carotte et le bâton 「アメとムチ」

ニンジンとこん棒が日本語の「アメとムチ」に相当。

marcher à la carotte「報酬につられて行動する」

いかにも、馬の鼻先にニンジンぶら下げて歩かせる、っていう状況をイメージさせる表現!

NAVET (n.m.) カブ

avoir du sang de navet「貧血症である、意気地がない」

カブの切り口が白く水っぽいことから、血気盛んな赤い血と対照的、ということで、薄い血、ひいては意気地なし(lâche)をさすようになったらしい。20世紀になってから出てきた、比較的新しい表現らしい。

「駄作、失敗作」を意味する

Ce film est un navet.(この映画はてんでつまらない)
(仏和大辞典)

カブの味の水っぽさから、こんな風に使われることもあるようです。

ARTICHAUT (n.m.) アーティチョーク

avoir un coeur d’artichaut「移り気、浮気心、ほれっぽい」

アーティチョークって日本ではあまり馴染みのない野菜で、私も食べた事ないんですが、
この表現って、アーティチョークの食べ方から来ているらしいです。

ゆでたあと、花弁を芯から一枚一枚はがして食べるらしいですが、この花弁を恋の対象に見立てて、「いろんな人に目移りして惚れる」という意味になったみたいです。

CHOU (n.m.) (pl. CHOUX) キャベツ

まずキャベツにもいろんな種類があって、

chou de Bruxelles 芽キャベツ
chou chinois 白菜
chou à la crème シュークリーム
mon (petit) chou (愛する人に向って)ねぇ坊や、あなた

キャベツも「ブリュッセル(Bruxelles)」のだと「芽キャベツ」「中国(chinois)」のだと「白菜」、というのは面白いですね。

ところで、キャベツは昔から貧しい人の食べ物だったそうで(そういえば、Charlie Et LA Chocolaterie (Collection Folio Junior) [French]、原作はイギリスの話ですが、貧しいチャーリーの家族は毎日キャベツ食べてて、というくだりがあったなぁ・・・)、
いろんな成句があります。

être(finir) dans les choux「びりになる、(試験など)失敗する、窮地に陥る」

「les choux」「echouer(失敗する)」音が似ている、と言う理由でこういう言い回しになってるらしい。

faire chou blanc「失敗する、ねらいが外れる」

もともとは、九柱戯(jeu de quilles。ボーリングのようなゲーム)で無得点だった場合、「un coup blanc」と言ったらしく、
またベリー地方の方言で、coupが「choup」と発音されていたのが「chou」の音と似てたことからきた表現といわれてるようです。

faire ses choux gras de qc「~を利用する、~に大喜びする、~の甘い汁を吸う」

歴史とともに意味が変遷している表現のようで、

昔、貧しい人の食事はいつもキャベツばかりであっさりしてたため、ちょっとリッチな味わいにしようと思ったらキャベツにラード(lard。豚脂)を入れてコクを出した料理にしたそうです。なので最初は「ご馳走を食べる(se régaler)」というような意味だったらしい。

それが時代を下ると、「脂を入れた」(engraissé) ⇒「富ませる、肥え太らせる」という連想を生み出し、「利益を得る」という意味に変わってきたそう。

今はあんまり良い意味では使わないらしく、「何か(誰か)を犠牲にして利益を得る」といったニュアンスで使われることが多いらしい。

ménager la chèvre et le choux「日和見を決めこむ、うまく立ち回る」

直訳すると「ヤギとキャベツを丁重に扱う」。

なんじゃそりゃ、って感じですが、
ヤギとキャベツを一緒に置いておくとヤギがキャベツを食べてしまう、即ち、ヤギとキャベツという2つの相反する利益を上手く守るために立ち回る、ということらしいです。

起源は意外と古いようで、なんと13世紀からある表現らしい。

さらに、この話の元には、「une chèvre, un chou et un loup」(ヤギとキャベツと狼)という一種のなぞなぞのような話があるようで、それは「農夫がヤギとキャベツと狼をつれて川を渡るのに、小船を持っているんだが、小さすぎて全部乗せられない。どの順番に船に乗せて運べばいいか?」という問題です。

ありえなさそーなシチュエーションですが、
狼はヤギを食べ、ヤギはキャベツを食べてしまうので、狼とヤギ、ヤギとキャベツを残したまま対岸には渡れない
まずヤギを対岸に運んで、その後狼とキャベツを運ぶ
という解になるそうな。(狼はキャベツ食べないことが前提)

ちょっと脱線しましたが、とにかく、この「ménager la chèvre et le choux」という表現はイイ意味では使われないです。
私利私欲や野心のために、信念なくその場その場の状況であっちに付き、こっちに付き、まさに日和見な行動を指します。

HARICOT VERT (n.m.) サヤインゲン

緑の豆がサヤインゲン。赤い豆(haricot rouge)はアズキ(小豆)なんだそうだ。

gagner des haricots「はした金を稼ぐ」

haricotは複数(haricots)で「取るに足らないもの、はした金」という意味があるそうです。

Des haricots!(どうしようもない、しけた話だよ。)

C’est la fin des haricots.「万事休す」

単に”La fin des haricots.“だけでも同じ意味。「絶望的」な状態を指すようです。

courir sur le haricot (à qn)「(人を)うんざりさせる、いらだたせる、悩ませる」

courirはtaperと言うことも。

PETITS POIS (n.m.) グリンピース

豆もいろんな種類がありますね。

donner un pois pour avoir une fève「エビでタイを釣る」

fève(ソラマメ)pois(エンドウマメ、グリンピース)よりも大きいですね。

La fleur des pois「(社交界の)寵児、伊達男、最良の部分」

「エンドウマメの花」ってけっこう可愛い花ですけど、そんな華やかってこともないと思うが。。
今はあまり使われてない言葉っぽいですが、20世紀初頭のパリを舞台にしたお芝居の題になっている。
http://www.billetreduc.com/158813/evt.htm

ÉPINARD (n.m.) ほうれん草

mettre du beurre dans les épinards「暮らし向きを良くする」

バターって食材が高価だから、ほうれん草を料理するのにバターが使えるというのは経済的に余裕があるということでしょう。

OIGNONS (n.m.) タマネギ

aux petits oignons「完璧に、念入りに、(反語的に)手荒く、ひどく」

もとは料理関係の表現だったらしい。

se nourrir d’un oignon「つましく(けちけちと)暮らす」

ほうれん草と逆ですね。

Occupe-toi de tes oignons「自分のことにかまってろ、余計なお世話だ」

oignonの隠語が関係しているため、ちょっとお下品な感じがするんですが。。。

似たような表現としては、

Ce n’est pas tes oignons.「君には関係ない」
Ce n’est pas mes oignons. 「私には関係ない」

というものも。

その他、日本でもなじみの野菜をあげると

ラルースやさしい仏仏には、日本でおなじみの野菜がのってなかったので調べてみると。

bardane (n.f.) ごぼう
radis (n.m.) ラディッシュ
gombo (n.m.) オクラ
citrouille (n.f.) かぼちゃ
concombre (n.m.) キュウリ
tomate (n.f.) トマト
ail (n.m.) ニンニク
laitue (n.f.) レタス
épi de maïs (n.m.) トウモロコシ
céleri (n.m.) セロリ

・・・

「ごぼう」は日本ではポピュラーな食べ物でごぼうに関連する表現もありますが(ごぼう抜き、とか)、ヨーロッパではメジャーでないですね。
la bardane japonaiseという場合もあるようです。

radis japonais (n.m.) 大根

大根は「日本のラディッシュ」なんですね。

ne pas avoir un radis「びた一文持ってない」

ラディッシュは安い野菜で、昔のカフェや居酒屋ではお通しとして無料で提供されたから、とか
カタチが丸くてコインに似てるから、こんな表現ができたとか。

citrouille (n.f.) かぼちゃ

avoir la tête comme une citrouille「心配事を山ほど抱えている」

かぼちゃは隠語で「頭」「のろま、まぬけ」という意味があります。
かぼちゃの形が頭に似てるといえば似てる。

さいごに

いろんな野菜を調べてみましたが、たくさんありすぎてちょっと消化不良をおこし気味。。
言い回しも、想像しやすいものから、「なんで?」となるものもけっこうありました。
今回参考にしたのは↓のサイト。

http://www.expressio.fr/
http://www.projet-voltaire.fr/
http://www.france-pittoresque.com/
http://www.pourquois.com/
http://www.expressions-francaises.fr/

読んでも私の語学力では「???」というのが多かったので、詳しいことは上記サイトを参考にしてみてください。

ところで、野菜(légume)って、「e」で終わる単語だから女性名詞かと思ってたら男性名詞なんですよね。
でも、女性名詞でも使われる事があって、その場合は、
「重要人物、高官、お偉方」
という意味になるようです。

légume (n.f.) 重要人物、高官、お偉方

être dans les lègume 「重要なポストにいる」

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